高専プロコンOBの徳田(@dakuton)です。高専プロコン30周年おめでとうございます。
今年は台風19号による開催の心配もありましたが、何とか現地観戦できたのでレポートをまとめてみました。写真は宮崎の海です。
高専プロコンとは?
- 全国の高専生が1か所(主管校の都道府県)に集結して、プログラミング技術やアイデア実現力を競う大会です。
- 本年度は宮崎県都城市にて開催されました。
- 開催部門(公式サイトより、非公式部門は除く)
- 課題部門: 「ICT を活用した地域活性化」をテーマにした作品
- 自由部門: 自由なテーマで独創的な作品
- 競技部門: 与えられたルールによる対抗戦
- オプティムは第18回 津山大会(2007)から協賛企業として参加しています。
私のプロコン参加履歴
私が現地参加した大会は以下のとおりです。
- 第16回 米子大会(2005): 課題部門に出場
- 第18回 津山大会(2007): 課題部門に出場
- 第20回 木更津大会(2009): 観戦(協賛企業)
- 第25回 一関大会(2014): 観戦(プライベート)
- 第26回 長野大会(2015): 観戦(プライベート)
- 第27回 鳥羽大会(2016): 観戦(協賛企業)
- 第28回 大島大会(2017): 観戦(協賛企業)
- 第29回 阿南大会(2018): 観戦(協賛企業)
- 第30回 都城大会(2019): 観戦(協賛企業) ★New!!!
当日レポート
今年は台風19号の影響により、オプティムとしては例年の50%人員にて参加しました。
企業側はさておき、移動困難なため辞退された学校は、直前まで準備された学生がいる中での決断であり、先生方としても苦しい判断だったかと思います。
競技部門
写真は3階席から見た決勝戦+3位決定戦の様子です。(画面の上部が見えなかったのでYoutube Live配信を観ながら実況を聞いていました)
今年の競技部門は、昨年度(阿南大会)の「陣取り合戦」というコンセプトを活かしつつ、昨年度の運営面で課題となっていた点をうまく改善できているなという印象です。競技部門経験者だけでなくボードゲーム好きも観ていて楽しめると思いました。
- 今年の競技部門おすすめポイント
- ボードゲーム的戦略性: 取ったマスだけでなく囲んだマス(減点のマスは絶対値評価)も加点される。他チームの陣地を壊すことも可能。
- マップとあわせて同時対戦チーム数(4チーム〜2チーム)が変わることで1の戦略が変化する点
- 実況とBGM
- アーカイブ
- YouTube プレイリスト
- 競技システム
- 本年度も高専OBが開発したそうです。激戦を制したスコア推移などを見ることができます。(対戦例)
デモ展示(課題部門・自由部門)
半年(募集開始)〜4ヶ月(予選通過)ほどの開発期間にて、試せることは限られています。(高専4年生での参加者だと、夏休みはインターンと並行して開発をすすめた方もいました。) そういった中で、動くものを作るだけでなく、ユーザーからのフィードバック反映まで含めてデモ展示に挑んでいる学校も多数あり非常にハイレベルでした。
全作品を見たわけではなく、私がデモを見た範囲ではありますが、B to Bサービスを主体とする企業からみて、デモ内容が緻密だなと感じた5作品を紹介します。
- 問題設定・利用シーン・類似サービス比較など
下記以外にも、触って楽しい作品や、高い技術力で問題を突破している作品などあり、それらをピックアップすると全作品を紹介することになるので割愛させてください。(そもそも独創的なアイデアであるため本選出場しているわけで)
鳥羽商船高専 「とばまっぷ -現在・過去・未来のまちの姿を地図上に可視化-」
住民情報から将来の人口分布を予測。2週間に1回のペースで鳥羽市の方と協議しながらシステムを開発したとのことで、年齢層などデータの分け方が実務的な作品。
# 地域活性化という課題テーマに対して非常に本質的だったように思います。
国際高専「Safety双光 -高齢者の自動車事故を防ぎ安心できる街づくり-」
ラズパイとソーラーパネルを用いた独立電源で動作するデバイスを開発。1・2年生のみのチームでありながら、コスト面比較やPoCまで対応。
# シンプルな構成ながらやりたいことが明確に実現できている点が素晴らしいと思いました。
産技高専 品川キャンパス「Agricowture -近未来型放牧牛管理システム-」
畜産農家の方(参加者の実家が畜産農家だそうです)をサポートする、放牧牛管理システムを開発。自動化(GPSデバイスでの移動量をもとに発情期を検知)と可視化(ドローンで目視できる安心感)をうまく組み合わせている。
# オプティムのスマート農業における取り組みに非常に近しいという点で本作品の紹介は外せないなと思いました。あと名前のセンスが好きです。
弓削商船高専「Search-a-BLE -さがし、つながる街づくり-」
指導教員の先生が落とし物をしたエピソードにヒントを得て、BLE(Bluetooth Low Energy)により落とし物を探すアプリを開発。情報の公開範囲を限定的にするため、サーバー通信を要しない環境で動作可能にした。
# 個人レベルでいえば最も使いたいサービス。いい話に感動してたら写真撮るの忘れました...
阿南高専「あ!水ダス(AMIZDAS) -水災害を自ら防ぐ水位監視システム-」
ダムなどの水域に設置できるデバイスと監視サービスを開発。水田など農地向けは災害時だけでなく通常時利用も視野に入れている。
# できるだけ既存のパーツを組み合わせてデバイスを作製しているあたりに玄人ぽさを感じます。
感想「コラボすると楽しそう」
各校の作品で用いている手法を組み合わせると面白そうだなと思えるものがありました。
例えば、
- 利用できる計算リソースにもよりますが、オリジナル物語生成システム(広島商船高専「アリスteaパーティー」)で用いていたBidirectional LSTMやそれに関連する手法が活用できる作品がいくつかありそうです。
- 点字プリンタ(東京高専「:::doc -自動点字相互翻訳システム-」)の課題として挙げていた文書校正
- 聴覚障害者向けの環境音可視化(大島商船高専「観音 -音のミエル世界へ-」)における音の分類精度改善
- スポーツのフォームチェックに関しては、動画ベースとセンサベースで取り組んだチームの2チームがありました。動画で手広いデータ収集+センサによる詳細なフォームチェックという使い分けでいいとこ取りできたらよいなと思いました。
- 動画ベースで取り組んだチーム: 鳥羽商船高専「JO-HARI」
- センサベースで取り組んだチーム: 熊本高専 熊本キャンパス「FormTube -運動姿勢を評価するサポートシステム-」
また、競技部門を経験していると、課題・自由部門において高いパフォーマンス、リアルタイム性が要求される部分の開発に役立ちます。
上記を踏まえると、学校・部門を超えた相互交流を増やすことで、高専プロコンに参加している学生たちのスキルアップが図れるのではないかと思っています。 しかし、プロコン当日での交流はなかなか難しいです。
- 課題部門・自由部門は、審査準備(プレゼン審査、デモ審査、マニュアル審査)に加えて、1日目夜はプレゼン審査フィードバック内容から修正作業にあたるなど、他の作品を見る時間があまり取れません。(私が課題部門に参加していたときも、すべての審査が終わる2日目午後は力尽きていました)
- 競技部門についても、1日目の結果を受けて手法調整にあたることは珍しくありません。また、2日目の試合が終わる頃にはデモ展示も撤収されてしまうため、勝ち上がるほど他の学校作品が見れなくなるというジレンマがあります。
来年の課題部門テーマが「楽しく学び合える」ということで、企業側としては高専生が楽しく学べる場を提供していければと思います。
おまけ
開催前日に立ち寄った青島神社で過去の競技部門っぽさを感じるスポットをみつけました。
石碑の下に完全解答(第26回 長野大会「石畳職人Z」)
さいころの出た目で決まるおみくじ(第23回 有明大会「数えなサイ ~Here are Dice!~」)
絵馬を飾る場所がハート(第16回 米子大会「ハートを捜せ!」)
おわりに
先生方、協賛企業の方々、運営の方々、そしてなにより出場された学生の皆さんお疲れさまでした。
来年は悪天候などに見舞われず無事開催できることを願います。
(安全第一ではありますが、本年度のように参加できない学校が出ませんように)
最後に、来週開催のLT大会にて私も話すので宣伝しておきます。
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