こんにちは! OPTiM Biz 開発チームの北川、小橋、OPTiM Geo Scan 開発チームの山田、太田です。 今回は iOSDC 2026 に参加してまいりました。会場の雰囲気や気になった発表について書きます。
iOSDC 2026 とは
iOS関連技術をコアのテーマとした、日本国内最大規模のソフトウェア技術者のためのカンファレンスです。今年は、20 分・40分のレギュラートーク、5分の LT・ルーキーズ LT が主なセッションとなり参加人数 1,000 人規模となる大盛況でした。

会場の雰囲気
今年は昨年と同じ会場で、有明セントラルタワーホール&カンファレンスが会場となりました。(ニコニコ生放送でのオンライン配信も行われました)
3Fが主にセッションとなる会場があり、4F ではスポンサーブースと軽食・飲料(酒類を含む)が提供されました。また、スポンサーブースを回ってハンコを押してもらうことで揃えるビンゴカードで豪華景品のもらえる抽選がありました。

気になったセッション
北川(OPTiM Biz)
ひなっこさんによる「大幅なOSアップデートが来ても怖くない!〜Liquid Glass対応でエンジニアとして組織を動かすために意識したこと〜」
普段の業務ではiOSアプリの開発・保守に携わっており、毎年のOSアップデートに合わせて、ベータ版の段階から既存アプリへの影響調査や動作検証、非推奨APIへの対応などを行っています。そのため、今回のセッションで紹介された、エンジニア自身が早い段階から新しい環境を触り、影響範囲や必要な対応を具体化していくという進め方には特に共感しました。
実際のOSアップデート対応では、単純に新しいOSでアプリが動作するかを確認するだけではありません。新しいSDKで見つかる警告や非推奨API、UIの変更、これまで成立していた実装上の前提が崩れるケースなど、確認すべきことは多岐にわたります。私が携わっているMDMの領域では、OSのデバイス管理に関する仕様変更がプロダクトの機能や仕様に直接影響することもあるため、AppleのドキュメントやWWDC、ベータ版などから早期に情報を収集し、実際のアプリや機能への影響を確認することを重要視しています。
今回のセッションを通して特に印象に残ったのは、そこで得た技術情報をエンジニアだけで抱えるのではなく、他職種が判断できる情報へ「翻訳」していくという考え方です。「新しいAPIへの対応が必要」という技術的な説明だけではなく、それによってユーザー体験やデザイン、既存機能にどのような影響があり、いつまでに、どの程度の対応が必要なのかまで整理することで、共通の課題として扱えるようになります。
また、影響が明確になってから対応を始めるのではなく、開発計画が固まる前に必要な工数やスケジュールを提示し、通常の開発計画の中にOS対応を組み込んでいた点も印象的でした。早期に動くことは単にリリースを早めるためではなく、十分な検証期間を確保し、QAで見つかる想定外の問題にも対応できる余裕を作ることにつながります。
OSアップデート対応を「エンジニアが調査して修正する仕事」で終わらせず、早期に影響を把握し、他職種へ伝わる形に整理し、関係者を巻き込みながら計画へ落とし込む。今回紹介されたこの進め方は、今後の大規模なOSアップデートにも活用できる考え方だと感じました。私自身も、技術的なキャッチアップだけで終わらず、得た情報をチームや関係者の具体的な行動につなげるところまで意識して取り組んでいきたいと思います。
小橋(OPTiM Biz)
原隆幸さんによる「スマホアプリ開発におけるハーネスエンジニアリングの取り組み」
本セッションは、食べログを開発する株式会社カカクコムのアプリ基盤チームによるセッションで、「アプリ開発を誰でもできるようにする」というミッションのもと、AIエージェントを活用した開発プロセス全体を広い意味で「ハーネスエンジニアリング」と捉えており、その中でもAIに何を伝えるかという「コンテキスト」と、AIの生成物をどう検証・矯正するかという「ハーネス(ガードレール)」を両輪として整備している、という取り組みが紹介されました。 特に印象的だったのは、「コンテキスト」の設計に関する具体的な取り組みです。「コンテキスト負債を防ぐ」ことを大前提に、「量より質」「必要なときに取り出す」「SSOT(単一の信頼できる情報源)」を原則として掲げ、ワークスペース全体で共通する設定、OS共通のドキュメント、リポジトリ固有の規約という3層構造でCLAUDE.mdやドキュメントを整理していた点です。「AIに何を伝えるか」を感覚ではなく、レイヤーごとの役割分担として仕組み化している点が印象的でした。 自分は元々、AIの生成物をLintや依存関係チェックで機械的に弾く「ハーネス」については知っていましたが、AIに渡す情報側を「コンテキスト」として体系的に設計するという発想はあまり意識していませんでした。ハーネスは単体で完結するものではなく、コンテキストという土台があって初めて機能するものだと気づけたのが、一番の収穫でした。 今後AIエージェントに実装を任せる際は、機械的に弾く仕組みを整えるだけでなく、その手前でAIに何を伝えるかというコンテキストの設計もあわせて考えるようにしたいと思います。
山田(OPTiM Geo Scan)
Ryomm さんによる「巨大モノリシックアプリモダン化大作戦」
巨大なモノリシックなアプリをどのようにしてモダン(アプリアーキテクチャ、Swift 6、SwiftUI、Swift Package Manager等の利用)にしていくのかについて、時系列に沿っておきた事象とその時の戦略・方針について述べていくという、まるで自分も同じような体験をしているかのような内容で非常にわかりやすかったです。私が携わっているプロダクトでも似たような課題として MVVM のアーキテクチャの ViewModel がかなり肥大化しているしている部分があり、これをいかに自分たちの開発しやすいコードに作り変えていくのかという課題を持っています。今回の発表を通して得たこととして、アーキテクチャにおけるただ一つの正解というのは存在せず、まずは小さく、影響範囲を絞って自分たちが前に進められるようなやり方を作り出すということが重要だと思いました。
太田(OPTiM Geo Scan)
續橋 涼さんによる「インターネットなしで、その場のみんなとつながる──CoreBluetoothで作るメッシュ型チャット」
インターネットもサーバーも使わず、その場にいる端末同士だけでつながるチャットアプリ「RelayChat」の開発を題材に、CoreBluetooth で双方向通信を実装する際の設計とつまずきポイントが解説されました。冒頭では3台とも機内モードにした iPhone でチャットが成立するデモが示され、直接電波が届かない端末にも間の端末が中継して届く様子が実演されていました。
まず基礎として、BLE の役割は探す側の Central と見つけてもらう側の Peripheral の2つだけであり、役割は端末の種類ではなく相手との関係で決まると整理されていました。チャットのように上下のない通信では1台が両方を担う必要があり、これをデュアルロールと呼びます。虫めがねで探しながら名札を掲げて立つ、という比喩が用いられ、何を実現したいのかが一度で伝わる説明でした。
一方で、対等にした代償として実装が複雑になることも示されていました。同じ相手に対して2つの役割が乗るため、接続の保持方法を誤ると参照が失われ、iOS 側から強制的に切断されて再接続を繰り返す。切断と再接続だけで5分が経過したというログが実際に提示されており、説得力がありました。
中継の仕組みも印象的でした。最短経路の計算はせず、受け取った端末が残りの全員に配り直し、受け取った側で転送を止める設計です。止める仕組みは中継回数の上限、既読メッセージの破棄、経路の記録の3つですが、そのうち経路記録が実際には機能していなかったという話が語られました。記録していた ID と比較していた ID が別物であったにもかかわらず、型はどちらも文字列だったためコンパイルは通ってしまい、それでも残りの2つが働いていたため動作しているように見えていたとのことです。型が合っていても意味の異なる値を比較してしまう危うさは、普段の実装でも意識したい点だと感じました。
アプリを閉じても接続を維持する State Restoration の解説も実践的でした。接続状態をシステムに預けて復帰時に返してもらう仕組みですが、復元処理が Bluetooth の準備完了より先に呼ばれるため、そこで探索を始めると弾かれ、連鎖して鍵交換ができず復帰後5分間無反応になっていたと紹介されていました。実際に RelayChat を試したところ、アプリを閉じて画面をオフにした状態でも通知が届き、解説されていた仕組みが動作していることを確認できました。
BLE でつなぐこと自体は難しくなく、難しいのは「対等」を作ることだ、というまとめが全体を貫いていました。うまくいった実装だけでなく、動いているように見えて実は効いていなかった失敗までログを交えて共有されていた点が、このセッションで最も参考になった部分です。
おわりに
今回の iOSDC 2026 は、アプリの開発業務における改善できるポイントや、アプリ開発以外での Swift の使い方と観点の広がりを持つことができたと感じています。発表された内容はアーカイブされているので、見逃した発表や気になった発表について改めて動画をしっかり見返すことでより一層の理解を深めたいと思います。最後に、iOS 開発者にとって貴重な機会となるイベントを運営していただいている方々に感謝申し上げます。
OPTiMには iOS アプリケーション開発だけにとどまらず、多方面で高い技術力を持つエンジニアが多く在籍しています。 そんな方々と共に OPTiM のビジョンである「ネットを空気に変える」を実現するためのプロダクト開発を進めていきませんか? ご興味のある方は、ぜひ一度ご連絡ください!