はじめに
サービス開発統括本部の福浦です。
普段は防除作業全体の DX 化を行う、ピンポイントタイム散布サービス(PTS)の開発を担当しています。
本記事は 「知識管理」 に焦点を当てた、Obsidian の活用法についての内容となります。
なぜこの記事を書こうと思ったのか
今年の 7 月に Obsidian に関するイベントで登壇する機会をいただきました。
(当時のスライド)
そこでは「メモ整理が苦手な者による頑張らない Obsidian 活用術」というタイトルで、私なりの知識管理手法についてお話ししました。
今回はその内容を改めてブラッシュアップしつつ、登壇時には時間の都合で深く触れられなかった
Why(なぜ知識管理が必要なのか) の部分についても掘り下げていきます。
- はじめに
- なぜ知識管理が必要なのか
- 知識管理(メモ管理)の難しさと課題
- 私的 Obsidian 活用術
- おわりに
なぜ知識管理が必要なのか
このセクションは私の個人的な考え(ポエム)が中心です。「Obsidian の活用法だけ知りたい!」という方は、後半のセクションまで飛ばしていただければと思います。
みなさんは、日々の学びやふとした気づきを、どのように記録していますか?
手書きのメモ帳、スマホのアプリ、あるいは「自分の脳内メモリだけが頼り!」という方もいるかもしれません。
AI が急速に発達した今、情報を「手に入れること」自体はとても簡単になりました。
しかし、「情報を集めること」とそれを自分の「知識として活用すること」は似て非なるものです。
こうした「個人の知識を体系的に管理・活用する手法」は、
PKM(Personal Knowledge Management) と呼ばれています。
このセクションでは、なぜ PKM が必要なのか について、私なりの視点で述べていきます。
PKM(Personal Knowledge Management)とは
そもそも PKM とは何でしょうか。
抽象度の高い言葉であるため、捉え方は人それぞれですが、
私の中では次のように定義しています。
「個人が重要だと感じる情報を収集・整理し、自分のための『知識』へと変換・活用するための一連の仕組み」
端的に言えば、情報を知識へと変換するための仕組みを作ることだと考えています。
では、その「情報」と「知識」の違いとは何でしょうか...
「情報」と「知識」の違い

情報(Information) とは、データに特定の文脈や意味が加わったものであり、私たちの外側に存在する客観的な実体のことを指します。
例えば、本の内容、記事、動画、最近だと AI が生成する回答などもこれに当たると思います。
これらは誰でもアクセスできる形で存在しますが、
あくまで「そこに置かれているだけ」の客観的な存在です。
一方、知識(Knowledge) とは、情報を元に 自分自身の理解・解釈が加わり、構造化されたもの を指します。
どれだけ多くの情報を集めても、 それを咀嚼し、既存の経験や理解と結びつけなければ、知識にはなりません。
「情報」と「知識」の関係

知識と情報は、一方通行の関係ではなく、相互に循環しています。
知識から情報が生まれる(形式知化):
私たちが持つ「知識」を言葉や図として表現(アウトプット)した瞬間、それは他者がアクセス可能な「情報」となります。 情報には必ず文脈(Context)が含まれ、その情報を作った人の理解、解釈、背景が反映されます。 そのため、情報は常に「誰かの主観を通した正しさ」であり、絶対的な真実とは限りません。情報から知識が生まれる(解釈と統合):
情報を知識として取り込むためには、受け手側に解釈の土台となる スキーマ(メンタルモデル) が必要です。
知識がなければ、情報を正しく評価・理解することはできません。
そして新たな情報は、既存の知識を更新し、書き換えていきます。
知識から情報が生まれ、その情報がまた新たな知識を生む。
このサイクルによって情報は連鎖的に増え続けていきます。

特に AI 時代においては、情報の生成コストが劇的に下がったため、私たちは膨大な「情報の波」にさらされています。
だからこそ重要なのは、
情報をただ 溜め込む(Collecting) のではなく、
自分の知識ネットワークに接続し、構造化する(Connecting) ことだと考えています。
AI の回答も、あくまで確率的に生成された「情報」に過ぎません。
それらを 理解、咀嚼し、自分の文脈で使いこなす(管理する)こと が大切だと、私は考えています。
なぜ知識管理が必要なのか
では、エンジニアにとって、なぜ知識管理が必要なのでしょうか。
私が重要だと考えている理由を、3 つ紹介します。
1. 意思決定の「根拠」になるから
意思決定の文脈における知識とは、考え、判断するための材料 そのものです。
日々の業務の中でも、私たちは次のような意思決定を行っています。
- アーキテクチャや設計方針の選択
- バグ調査時の原因特定や切り分け
- 技術選定やライブラリの採用判断
- パフォーマンス最適化の方針決定
例えば、「キャッシュを入れればパフォーマンスが向上する」という情報だけでは、 自分のプロジェクトに適用すべきかは判断できません。
データの更新頻度やリアルタイム性の要求、
過去にキャッシュが原因で起きた問題といった知識を踏まえて初めて、
「ここではキャッシュを使うべきか」という判断が可能になります。
2. 「コンテキスト」は未来に活きるため
意思決定では、結論だけでなく
そこに至った背景や理由などの 「文脈(Context)」を記録として残しておくことが重要です。
例えば、あるライブラリを選定した理由や、障害発生時に特定の対応方針を選択した理由。
これらは単なる「結果」ではなく、その時のチームメンバーの技術スタック、プロジェクトの構成、工数感、ビジネス的な制約など、様々な判断材料(文脈) が絡み合って導き出されたものです。
知識管理とは、単に「結論(情報)」を保存するだけでなく、 この 「文脈(知識)」を紐付けて保存しておくことでもあります。
もしこの背景知識が抜け落ちてしまうと、後から見返した時に「なぜこの選択をしたのか」が分からなくなります。
その結果、同じような調査を繰り返すことになったり、あるいは過去の失敗を繰り返し、問題が再発するリスクが高まります。
逆に、これらの背景を適切に記録し、知識として管理しておけば、未来の自分やチームメンバーが同様の課題に直面した際、過去の意思決定を道標として、より迅速かつ適切な判断を下すことができるようになります。
3. 情報の誤解や齟齬を防ぐため
自分が持っている「知識」を言葉やドキュメント(情報)として出力したとき、受け手に同じ「知識(前提条件や文脈)」がないと、意図が正しく伝わらず、誤解や齟齬が生まれてしまいます。
例えば、コードレビューで 「ここはキャッシュを使わずに都度 DB に問い合わせる実装にしました」 と説明したとします。 もしレビュアーに「このデータはリアルタイム性が最優先される」という仕様の知識が共有されていなければ、「パフォーマンスが悪い実装だ」と誤解され、不要な議論が発生してしまうかもしれません。
また、過去のコード(情報)を読んだとき、「なぜこんな冗長な書き方をしているんだ?」と疑問に思うこともあるでしょう。 もしそこに、「当時はライブラリのバグがあり、回避策としてこう書かざるを得なかった」という当時の状況(知識) が共有されていなければ、安易にリファクタリングをしてバグを再発させてしまうリスクがあります。
情報を正しく扱うためには、その情報の裏側にある 「前提知識」や「文脈」をセットで理解・管理することが不可欠です。
これらの理由から、知識管理が必要だと考えています。
知識管理(メモ管理)の難しさと課題
さて、ここまでは知識管理の必要性について語ってきました。
しかし、いざ理解していても、実践するにはいくつかの壁があります...
メモの種類と管理の違い

一括りに「メモ」といっても、その性質は大きく二つに分類できます。
「やること」を記録するメモ(Todo リスト)
- タスク、買い物リストなど。
- 短期的な記憶補助であり、完了すれば不要になる。
- 管理のポイント:「優先順位が整理されていること」。
「思考」を記録するメモ(知識)
- 学び、アイデア、技術的な調査ログなど。
- 長期的な資産であり、数ヶ月後、数年後に再び必要になる可能性がある。
- 管理のポイント:「必要になった時に探せる(再発見できる)こと」。
抽象化すると、前者は「タスク管理」、後者は「知識管理(PKM)」です。
この二つを同じルールで管理しようとすると、ほぼ確実に破綻します。
知識管理における「あるある」な悩み
知識としてのメモ(ストック情報)を管理する際、私たちはしばしば以下の課題に直面します。
- 検索性の欠如:
「以前どこかに書いたはずだが、見つからない」。整理が面倒で放置され、情報の墓場になってしまう。 - 心理的ハードル:
「どこに分類すべきか」「どう書くべきか」を考えてしまい、メモを取る手が止まる。
私は、こうした課題を解消するために Obsidian を活用しています。
私的 Obsidian 活用術
前半では「なぜ知識管理が必要なのか」という少し堅い話をしました。
ここからは、知識管理を行う上で私が愛用しているツールである Obsidian について、
個人的な推しポイントや活用テクニック、フォルダ構成をご紹介します。
個人的推しポイント
「数あるノートアプリの中で、なぜ Obsidian を選んだのか。」
みたいに講釈垂れるほど他のノートアプリを使ったこともないですし、
Obsidian を使い倒したわけではありませんが、私が Obsidian に魅力を感じた点は以下の三つです
- ローカルファイルベースである
- メモ同士の関連を作りやすい
- プラグインによるカスタマイズ性が高い
順に説明していきます。
1. ローカルファイルベースであること
Obsidian の実体は、クラウド上のデータベースではなく、ローカルにあるただの Markdown ファイル(.md)の集まりです。
Notion や Evernote と違いデータが手元にあるため、以下のようなメリットがあります。
- Obsidian 以外のエディタ(VSCode, Cursor, Vim など)でも普通に開いて編集できる。
- 早い(ネットワーク遅延がない)
- ※ プラグインを大量に入れると重くなるので注意が必要
- Git でバージョン管理ができる。
また、Obsidian で保管庫(Vault)を作ると、指定したフォルダに .obsidian という隠しフォルダが生成され、そこにプラグインや画面設定が全て保存されます。
つまり、このフォルダごと共有するだけで、「僕の考えた最強の Obsidian 構成」を他人に布教(共有) することができます。
2. メモ同士の関連を作りやすい
従来のフォルダ整理には限界があります。
例えば、「Obsidian で PKM を実践するメモ」を書いたとき、これは「Obsidian」フォルダに入れるべきでしょうか? それとも「PKM」フォルダでしょうか?
知識には複数の文脈(コンテキスト)が含まれるため、1 つのフォルダに閉じ込めるのは無理があります。
Obsidian は ウィキリンク([[ ]]) や、YAML フロントマター(プロパティ)を使って、ノート同士を網の目のように繋ぐことができます。
フォルダという「箱」ではなく、リンクという「糸」で情報を整理することで、あらゆる方向から情報にアクセスできるようになります。

3. プラグインによるカスタマイズ性が高い
Obsidian は拡張機能(プラグイン)が豊富で、自分好みの環境(IDE)を構築できます。
カレンダーや Kanban ボードなども簡単に追加でき、
必要であれば JavaScript / TypeScript で自作 することも可能 です。
「欲しい機能がなければ作る」 という選択肢がある点も、 エンジニアにとって大きな魅力だと思います。
具体的な活用 Tips
ここからは、実際に私が使っているプラグインと運用例を紹介します。
1. 定型作業を自動化する (Templater プラグイン)

日々のデイリーノート、読書メモ、技術調査ログなど、決まったフォーマットがあるものは Templater プラグインでテンプレート化しています。
ファイル作成と同時に日付やメタデータ(YAML)が自動入力されるため、「書き出しどうしよう?」と悩む秒数を削減できます。
また、「特定のフォルダにファイルを作ったら、自動でこのテンプレートを適用する」といった設定もできるので、運用が非常に楽になります。
Introduction - Templatersilentvoid13.github.io
2. ノートをデータベース化する (Dataview プラグイン)
Dataview プラグインを使うと、ノートのプロパティを元に、SQL ライクなクエリを書いてノートを動的に抽出・表示できます
例えば、
- タグに
#pkmがついているメモを一覧表示 - デイリーノートに、その日作成・更新したノートを自動でリストアップ
といった動的なダッシュボードを作成できます。
3. Web 記事を知識として取り込む (Obsidian Web Clipper)

Chrome の拡張機能である Obsidian Web Clipper を使って、気になった技術記事を 保存しています。
単にブックマークするだけでなく、その場でハイライトを引いた状態でクリップしたり、特定の url に対してテンプレートを自動適用することもできるので、情報 の整理を自動化することが可能になります。
4. コンテンツからタグを自動生成する(Auto Tag Link)
メモを取るとき、毎回手動でタグを付けたり、リンクを貼ったりするのは正直面倒ですよね...。
こういった悩みを解消するため、タグづけやリンクづけを自動化するプラグインを自作して運用しています。
仕組み:
Tagsフォルダ(後述)にあるキーワード(ファイル名)と一致する単語が、ノート内にないかチェックする。- もし一致すれば、自動で YAML フロントマターにタグを追加し、本文中の単語をウィキリンク化(
[[単語]])する。

こういった「あればいいな」と思う機能をプラグインとして自分で作れるのも、Obsidian の大きな魅力だと思います。
私の Obsidian の構成
Obsidian の構成の一例として、私の現状の Obsidian 構成を簡単に紹介します。
フォルダ構造
現在の私の Vault(保管庫)の構成は以下のようになっています。
. ├── 000_Inbox/ # とりあえずここに入れる ├── 001_Permanent/ # 構造化したメモ │ ├── 001_Note/ │ └── 002_ADR/ ├── 002_Literature/ # 本の索引や記事などの文献 │ ├── AI/ │ ├── Book/ │ ├── Clippings/ │ ├── Deepwiki/ │ └── Repository/ ├── 100_Event/ ├── 200_Daily/ # 日誌 ├── 999_Attachment/ # 画像などの添付ファイル ├── 999_Tags/ # タグノート └── 999_Template/ # Templater プラグインで使用するテンプレートファイル
000_Inbox
この中には気づき、調べたこと、学び、アイデアなど、構造化されていないメモを格納していきます。
「分類を考える前にまず書く」ことが大事なので、迷ったらここに入れるというルールにしています。
唯一意識しているのは、なるべく 「アトミックノート(1 ノート 1 テーマ)」 の単位で書くことです。
001_Permanent
Evergreen Notes や Zettelkasten(LYT) の思想を参考に、Inbox に入ったメモを咀嚼・清書し、構造化したノートを配置しています。
記事にしたいテーマや内容をノートとして作成しておいて、気が向いた時に肉付けしたり、他のノートとリンクさせたりして、少しずつ育てていくようにしています。
002_Literature
本、Web 記事、動画、GitHub リポジトリなど、外部の「情報源(ソース)」を管理する場所です。
Web Clipper で保存した記事や GitHub のリポジトリ、本のタイトルページがここに入ります
私の運用では、ここにあるのはあくまで「情報のインデックス(索引)」であり、そこから得た「学びや考察」は切り出して Inbox や Permanent フォルダに配置するようにしています。
1xx_ Work・Product・Event
仕事のプロジェクト、ミーティング の議事録、登壇イベントなど、特定の期間やイベントに紐づくメモを格納します。
感覚的になりますが、「知識」というよりは「記録」に近い性質のものを配置します。
200_ Daily
日毎に生成されるデイリーノートです。 その日の作業ログや振り返りを書きます。
また、Dataview を組み合わせ、「その日に作成・修正したノート」 が自動で一覧表示されるようにしており、作業の起点(ダッシュボード)としての役割を担っています。

999_Attachment
Attachment Management プラグイン等を使い、画像ファイルなどの添付ファイルを自動的にここへ集約しています。
999_Tags
obsidian や pkm といったキーワード自体を「ノート」として格納しています。
通常のハッシュタグ(#tag)の代わりに、このノートへのリンク([[tag]])を使うことで、Dataview を利用して「このキーワードに関連するノート一覧」を動的に生成する MOC (Map of Content) のような役割を持たせています。

テンプレートの配布
今回紹介した私の Obsidian 構成のテンプレートを、GitHub リポジトリで公開しています。
他にも プラグイン や Templater 用のテンプレートファイルなども含まれているので、ご活用ください。
おわりに
知識管理は、一度仕組みを作って終わりではなく、日々少しずつ育てていくものだと思います。
本記事が、これから Obsidian を始める方への土台や、 PKM を見直す小さなきっかけになれば幸いです。
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