社内でデザイン思考ワークショップを通じて得られたもの

はじめに

みなさんこんにちは、はじめましてプロモーション・デザインユニットでマネージャーをしている加藤です。 今回は、なかなか業務で接点のないデザイナーとエンジニアの意見交換やデザインへの興味・関心といったの機会作り目的に実施しているデザイン&開発情報共有会での一幕。 デザイン思考をワークショップ形式で一通り実践してみる!に取り組んだ際の内容を簡単にご紹介します。

きっかけ

良いプロダクトを作る上で正しいプロセスとは?について議論、深堀していく中で「誰に」「何を」届けるかを探るフェーズが重要だと多くのメンバーが考えていました。提供 → 開発 → 設計 → 企画 → 顧客要望と遡り、根幹となる企画フェーズで顧客ニーズを如何に要件化すべきかと考えた際、デザイン思考というプロセスがマッチしていると気付きました。 また、話題にもなっており興味関心がある、面白そう、というニーズからもワークショップ形式で一連のプロセスを体験しようということで実施を決めました。 今回は、一般的な流れと取り組みに対する俯瞰的な視点を交えて解説していきます。

【ステップ1. 解決したい問題から、課題(テーマ)を決める】

各々が自社で感じているリアルな問題から課題を書き込みゴールとなるテーマを1つ決めます。 デザイン思考に適したテーマは日々の体験から選ぶと良いでしょう。「デザイン」し直して「体験」を良くしていきましょう。

以降の全プロセスにおいて立ち戻る際の根幹となるので、ブレてしまわぬようしっかりとメンバーへ共有、浸透させることが重要になります。

【ステップ2. 課題(テーマ)に対して掘り下げていく】

ターゲットニーズを探るため、既知と未知の情報を整理していきます。ここからワークショップ形式と言うことでA/Bの2チームに分かれ、それぞれゴールに向けて進めていきます。

情報、ナレッジ共有のツールや方法が全社的に複雑化していることが両チームの記述で整理され、未知の情報や可能性について追記されています。

【ステップ3. 作り手が共感を得るためインタビュー項目を考えヒアリングを行う】

10問という限られた枠の中で、欲しい情報を引き出せるような質問や回答からより深堀りできる質問などを厳選します。この点もユーザーに対する共感を意識できる重要なフェーズになります。

制限付きにすることでインタビュイーの回答モチベーションを維持してもらう狙いがあります。一般的なアンケートでは質問数を増やす代わりにインセンティブ提供をするなどの工夫が行われます。

【ステップ4. インタビュー内容からターゲットの行動と感情をマッピングする】

UXを語る上で良く用いられるジャーニーマップはもちろん、その行動に伴う感情の浮き沈みをマッピングすることで、本質的なニーズにスコープを当てやすくなっていきます。

我々の裏テーマで、プロダクトに携わる全てのメンバーが共感できることがキーワードとなっており、ユーザーをより身近に感じることができるフェーズだと感じます。

【ステップ5. ペルソナを構築してインサイトを考える】

共感フェーズの最終章で、UXを語る上で度々用いられるペルソナはここでやっと登場します。ペルソナを作りインサイトを仮説として立てていきます。

ターゲット層からのヒアリングにより、行動と感情をブラッシュアップして初めて作り上げられるものがペルソナとなる訳です。この人に刺さるアウトプットでなければ成立しないので、より重要なポイントになります。

ひといき

長丁場なので、ここで一息。ステップ1-5を簡潔にまとめておきます

  1. テーマを定め、誰もがテーマに沿って行動し、議論し、時には立ち返れるように目の届くところに置く
  2. 固定観念に囚われないよう、既知と未知の情報をしっかりと精査できるように洗い出す
  3. 既知の情報を肯定するため、未知の情報を理解するために、ユーザーストレスにならないような項目数に絞ってアンケートを作る
  4. 正しいユーザー体験を提供するため、ジャーニーマップとエンパシーマップを作る
  5. インタビュー結果とジャーニーとエンパシーのマッピングからペルソナを設定することで精度を高める
【ステップ6. インサイトから着眼点(POV=Point of View)をつくる】

ペルソナの問題から「【ユーザー】は【ニーズ】を求めている、なぜなら【インサイト】だからだ」というPOVを3つ選び、当てはめていきます。その際、ユーザーニーズは本質的に求めていること、インサイトは障害となっていることという観点を用いると良いです。

インタビュイーの声に共感することで、多くの矛盾点が見つけられるようになりました。これら問題点を明らかにし、どう解決するか?にフォーカスしていきますが、ここがプロダクトアウトする際の強みとなる部分であり、エンジニアはもちろんデザイナーでも触れる機会が少ない箇所なので非常に良い経験となりました。

【ステップ7. 1つに絞ったPOVから、すべきこと(HMW=How Might We)のアイディアを書き出す】

POVに対して10項目のHMWを考えていきます。HMWは簡潔に、付箋に1つのみ、広すぎず狭すぎず、沢山のアイディアを書き出します。

アイディア出しは非現実的なものも含め1人あたり最低30出すことを目標にしました。ディスカッションまでの宿題とするため付箋にはどうすれば○○できるというテンプレートを用意、対面では整理を行うことに集中することで時間を有効活用できました。

【ステップ8. HMWのアイディアをカテゴリー分けして、最終アイディアを1つに絞り込む】

チーム全員でディスカッションを行い、発散と収束を繰り返して投票制で1つのアイディアに絞り込みます。絞り込んだ最終アイディアをブレイクダウンさせてプロトタイプのコンセプトを定義します。

チームディスカッションを通じてアイディアを分類するフェーズを経て、大まかな解決方法(プロトタイプ)を見定め、チーム内で共有できるようになりました。

【ステップ9. アイディアを具体化する】

方向性が定まったら、プロトタイプ制作に当たっての具体的な仕様を考えていきます。どんな問題を解決するのかを洗い出し、有用性・技術的実現性・経済的持続性をクリアできる具体的な方法を検討します。

今回のA/Bチームはそれぞれ、情報ポータルの開発情報共有の場という方向性に沿ってアイディアを膨らませていました。

【ステップ10. プロトタイピング】

デザイン思考の花形とも言える見せ場であるプロトタイプ制作フェーズでは、それぞれの方向性を実際に体験できるモノ・コトとして作り込んでいきます。

Aチームでは自社が既存で活用している複数の情報ポータルを集約して検索できるポータルサイトを、実装コストを必要としないプロトタイプツールAdobe XDを活用して作成しています。一方のBチームは、普段は話さない人と話せるマッチングの仕組みを作っています。

【ステップ11. ユーザーテスト】

各チーム制作したプロトタイプをステップ3のインタビューメンバーに改めて体験してもらい、課題解決に有効か?改善すべきところはあるか?などの評価と意見をもらいます。本来はこのPDCAを回していくことでプロダクトを磨いていきます。

今回はワークショップということでユーザーテストのまとめまでを一貫で体験するのが目的であったため、ここで終了となります。ここまで早4ヶ月弱、長いようであっという間でした。

【12. 振り返り】

最後に今回のワークショップを経ての振り返りとして、インタビュイーとは別で相手チームのアウトプットに対してチーム毎で評価会を実施しました。

今回のワークショップの裏テーマとして、プロトタイピングはどの程度異なるのか?それはどのフェーズで起こるのか?という観点を追えるとても素晴らしい取り組みとなりました。

まとめ

兎にも角にも、参加メンバーが最後まで意欲的に最後まで取り組み続けてくれたことが非常に嬉しかったです。エンジニアからは実際に業務に役立ったという声も聞け、デザイナー側でもデザイン思考のファシリテーションやユーザーマッピングの場面などの部分的に経験が浅い箇所について体験することで知見を深められた点、非常に良かったと思います。 課題としては、定時後の時間を活用して取り組んでもらったりと、まとまった時間は作りづらく、 また少人数で行っていた為に通常業務優先による欠席者が出てしまうと残ったメンバーへの負荷が大きくなる点が課題として残りました。 今回のワークショップにおいても、実務のプロジェクトにおいても、デザイン思考は非常にコストが高く、長期間での舵取りもタフな仕事だと改めて感じました。

デザイン&開発情報共有会はOPTiMのUI/UXデザイナーとエンジニアや企画の有志メンバーで、自社プロダクト品質の向上や新製品開発への知見の活用、デザインに携わるきっかけ作りを推進して月2回(隔週)、自由参加で開催しています。その他にも、デザインに対する質問チャットやデザイン思考ワークショップ(簡易版)なども開催予定です。

最後に

今回は以下の書籍を参考にワークショップを実施しました。 *1 book.impress.co.jp

オプティムでは、エンジニアだけではなく一緒に働いてくださるデザイナーも探しています。 プロモーション・デザインユニットでは、プロダクトのUI/UXデザインやロゴデザイン、印刷物・Webサイト制作、プロモーション業務などオプティム製品にまつわる様々なデザインのお仕事をしています。ご興味がある方、ご応募をお待ちしております。

www.optim.co.jp

*1:掲載のフレームワークはブログ公開までを想定し、全て自社デザイナーが書籍を参考に作成したものを活用しております。